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「ARUTOYU_MA」
第一章 白き乙女

07 これで、揃った?

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 時は少し戻り、ホームルームが終了した二年B組の教室。
 球技大会総合優勝をした熱が冷めやらないグループ、待ちわびた春休みが来た喜びに予定を互いに教え合うグループ、置き勉の教科書の山をなんとか鞄に詰め込もうとするグループと様々な動きを見せる生徒たち。
 どのグループも共通するのは、表彰式での消えた少女についての話題に、会話の中で何度か触れていることだった。
 暁は静かにそれを見つめていた。

「誰だったと思う?」
「あれって本当に飛んでいたのか?」
「ばーか、トんでんのはお前の頭だっつーの」
「なんつーか、優勝したのに変な感じだよなぁ」

 くるりと瞳を輝かせる。とんとん、と親指で唇を叩く。
 やがて、暁は一つのグループに目を付けたのかするりと動き出した。

「よっ、村岡おつかれー」
「あ、暁じゃん! 暁こそお疲れー!」
「いつにも増して、凄さに磨きがかかってたねー」
「さっすがアカツキ様々だよね、ありがたやー」
「もっと褒めてくれてもいんだぜ、俺も出場選手全員も」
「そうだそうだー、私も頑張ったんだぞー」
「ははー、由香様ーあーりーがーたーやー」
「何それ超ウケるんだけど」

 どっと笑いがおこる陽気な女子たちのグループだ。
 ぽんぽんと、あちらこちらから言葉が飛び交う。話題が急に変わることなど通常運転であり、基本的にノリが良い。
 だからこそ、暁が望んだ会話内容に持っていきやすい、このグループへと声を掛けた。

「なあ、俺さーあの時戻ってたから半分くらい見てなかったんだけど、あれ何があったんだ?」
「あれって……ああ、幽霊少女(仮)?」
「(仮)って」
「いやだって、まだわかんないし? 幽霊っぽかったし?」
「でも実際、この学校で昔死んだ子だったりして」
「ちょ、ちょっと止めてよ。本当、そういうの苦手なんだから」
「おーよしよし、そんな怖がりなあーちゃんは抱きしめてあげよう」

 ノリが良すぎる故に、脱線も多いのだが。
 女子独特のノリと雰囲気にはさすがに乗れない暁は、どのようにして話を進めるか悩みながらも笑みを浮かべるに留めていた。

「あ、でもさ。誰か名前呼んでなかった?」
「あー、なんか最初の方でそんなこと言ってたよね」
「そうそう、確か一年生の可愛い系のバスケ部男子」
「……戸狩か」

 それは暁自身も見ていた。立ち上がった流風が、血相を変えながら少女を凝視しているのを。
 尋常ではない雰囲気の流風ならば、何か判るだろうか。

「でも不思議だよねー、突然現れたと思ったら急に消えたんだし?」
「去年はこんなことなかったよね? 暁何か仕込んだ?」
「流石にねぇって! むしろやるならこんな謎だらけで終わらせるとかしたくねぇもん」
「だよねー。暁ならもっと楽しい感じで終わらせてくれるもんねー」
「まあ、暁クオリティによる暁サプライズにしては、ちょっと不発感半端ないもんねー」

 彼女たちの中で、自分の評価は一体どうなってるのだろう? 褒められているのだろうとは思うが、なんだか釈然としないものを感じる暁は、一度思考を止めて苦笑した。
 そう言えば、と誰かが口を開けば、話題が変わってしまうかと暁は身構えたが、それはいい意味で裏切られた。

「あたし、わりと近い位置にいたから分かるんだけど、消える前に何か言ってたよ」
「何それ!? 呪いの言葉!?」
「ちょっとやめてってば!」
「何、なんて言ってたの!?」
「いや、ちゃんとは聞き取れなかったけどさ。これで、ほにゃらら揃った、みたいな?」
「これで、揃った?」
「えっ、てか、ほにゃららって何?」
「だから、ちゃんと聞き取れなかったんだって。そこは分かりませんー」

 残念でした、と話を終わらせた彼女の言葉に、話題は別のものへと移る。話題に加わることなく、暁はその言葉の意味を考えようとしたが、視界の端に映った彼の行動を見るなり考えるのを後回しにした。

「っと、わり。そんじゃまた春になー!」
「えっ、また春にー…」
「ああ。おっけー、また春にー!」

 急に抜けた暁に戸惑うも、向かう先にいる人物を見て、納得したように見送る女子たち。
 人気者の暁が優先するのが、彼なら仕方ない。この学園内であれば、誰もがそう頷く相手なのだから。
 足早に駆け寄る暁に気付いたのか、重たい鞄を抱えながらも走り出そうとする彼。

「いーとー! 約束はどうした約束は!」
「何の約束もしてねぇし! って馬鹿追ってくんじゃねぇよ!」
「はははっ、甘いな!」

 銀色の髪をなびかせつつ、帰り支度をする人込みを縫って駆け抜ける結徒。
 暁は強く床を蹴り、人の波を避けるように壁を蹴る。おお、とその身のこなしに廊下にいた者達から感嘆の声が零れた。
 伸ばした手は教科書の詰まった重たい荷物を引っ掴み、ぐいと後ろへと結徒の身体を引く。
 荷物を犠牲に逃げ出そうとしてももう遅い。だん、と強く地面を踏みしめるや否やその片腕を拘束する。

「さ、三角飛び……!」
「すごい、映画見てるみたい」
「さすが金銀コンビ、追いかけるのもスケールが違う……」

 拘束された片腕が外れないことを察した結徒が苦々しい面持ちで項垂れると、暁はにっこりと笑った。

「さーて、放課後ピアノ弾く約束守ってもらおうか。なー、スケープゴートにしたいとくーん」
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