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「Hazel amd Gray」
紫色の娘

03 貴方

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 辺りが暗くなったら眠って、朝日が昇ったら起きる。それから、魔女のお母さまが置いていってくださった食べ物を少し頂くの。
 ご本があればそれを読むし、魔女のお母さまが望む物を作ることだってある。

 私の毎日はいつも変わらないの。
 だから、魔女のお母さまがいらっしゃったり、窓辺に小鳥さんがやってくださったりすると、とっても嬉しい。
 ピピピと鳴く小鳥さんに応えることはできないけれど、でも、その声を聞けるだけでも嬉しいわ。
 ……一人だと、少し淋しいんですもの。

「ピピピ」

 今日は小鳥さんがやってきてくださったから、作業を止めて窓辺に近寄った。
 逃げないでほしいな。私は何もしないから、少しの間だけでもここにいてほしい。
 私は声を出しちゃいけないから、小鳥さんの言葉にお返事できないけれど。

「ピピ、ピピピ…?」

 じっとしていたら、小鳥さんは私を見て小首を傾げた。
 どうしたのかな?
 私も同じように首を傾けた。

 トントンと、小さく跳ねながら近寄って来てくれるのが嬉しくて、じっとその姿を見つめてた。
 何をするのかな? って、恐がって逃げられたくなかったから、私は動かなかった。
 でも、そうしなければよかった。
 小鳥さんは何を思ったのか、私の髪を引っ張って窓の外に……

 落とした。

「……!?」

 長い三つ編みが外に垂れ下がって、ぐんと私の頭が引っ張られる感覚がした。
 思わず出そうになった声に驚いて、小鳥さんは飛び立ってしまったけれど、私はそれを気にしてなんかいられなかった。

 結ぶのも梳かすのも一苦労の私の髪は、足元まであるんだもの。
 塔の外に投げ出された髪をゆっくり少しずつ持ち上げて、私のお部屋の中に戻した。

 魔女のお母さまとお揃いの色の髪が、壁に擦れて少しくすんでしまったのが残念。
 三つ編みを手にして小さくため息をついた、そんな時だった。

「なんだ、ここは……?」

 魔女のお母さまの声じゃない。
 魔女のお母さまはこんな低い声じゃない。

 なら、これは誰の声?

 恐る恐る窓辺に顔を向けた。

「お前は何だ?」

 その人は不思議そうに首を傾げた。
 赤い髪が綺麗な、初めて見る人。本の挿し絵で見るような、王子さまの格好をしてる。

 魔女のお母さまや小鳥さん以外でここに来てくださる方はいらっしゃらないから、なんだか嬉しくなった。

「おい、なんなんだここは」

 私のお部屋をお顔だけ動かしてぐるりと見渡される。

 私のお部屋だと答えたいけれど、ダメ。私は声を出しちゃいけないんだもの。
 魔女のお母さまとの約束。

 だから、私は窓辺の人にただにっこりと笑って返した。

「何故答えない? お前はここの住人だろう?」

 こくりと頷く。
 ここは私のお部屋で、私だけが暮らす場所だから。

「言葉にして話せ。お前には口があるだろう」

 口があっても、お話はできないの。
 声を発しちゃいけないって、魔女のお母さまとずっとずっと約束してるから。
 魔女のお母さまに嫌われたくないもの。
 だから、貴方とお話できないの。

 私が困ったように首を傾げると、その人は少し驚いたように目を見開いた。

「お前もしかして、話せないのか?」

 あぁ、感じ取ってくださったわ。
 良かった。私から伝えることができないから、お返事しないことに呆れてお帰りになられるかとドキドキしてたの。

 私は小さく何度も頷いた。
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