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「BLUE_LIGHT」
Episode.0 不思議の国のアリス

04 退屈な猫

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「なぁ、ネズミ」
「ヤマネです。何ですか猫」
「生意気なこと言ってっと食うぞ」
「人肉はあんまりオススメできませんよ。て言うかやめてください仕事の邪魔です」
「可愛くねー」
「本望です」

 ごろんと、甲板に寝そべった。
 生意気なネズミをからかったってなにも面白くなんてない。

 航海は順調すぎてつまらなかった。
 どこみても海、海、海、海、海!
 一面青しか見えない。
 何かすることもない、何か見つけることもできない。

 別に仕事なんかいらないけど、それでも退屈は嫌いだ。
 船のことなんて全部魔法でやるから、俺が何かやる必要もない。

「なぁ、ネズミ」
「ヤマネです。今度は何ですか、猫」
「なんか面白いことないわけ? むしろお前が何かやれ」
「何むちゃ振りしてるんですか。僕は貴方と違って忙しいんです。暇ならマッドに言って仕事を貰ってくださいよ」
「仕事はいらない、好きじゃないし。刺激が欲しいだけ」
「じゃあ、今すぐ海にでも飛び込んでサメにでも追いかけられてください」
「サメねぇ……。なんかフカヒレ食べたいかも」

 あの濃厚スープの味を思い出してペロリと舌なめずりしたら、ネズミがびくりと肩をすくませたのが見えた。

 猫とネズミと言ったって、ただの呼び名なだけなのに。
 それでいちいちビビってる。
 何事もないようにしているのは知っているけど、俺が恐いんだろう。
 何故だかは知らないけど。

「そんなに暇ですか?」

 とん、と耳に響いた声。
 耳障りじゃないけど好きじゃない甘い声。
 誰だかなんて見なくったって分かる。

「暇だけど暇じゃない」
「奇遇ですね。幸い、私も退屈をもてあそんでいたんですよ」
「うわ、嬉しくない奇遇。あんたと同じとか考えるだけで嫌だね」

 優美な笑みとでも称されそうな笑顔で甲板に出てくる。

 何の気まぐれだか。
 日焼けは嫌いだから滅多に甲板になんか出てこないくせに。

 潮風に混じって香水の匂いが鼻につく。
 好きじゃない。

 むくりと身体を起き上がらせて、ひらりと船縁へと移る。
 だらんと腕を投げ出して、キラキラと輝く海を睨む。

「あー…、つまんない」

 上下に揺れる船に合わせて揺れる視界。
 何時間も何日も何年も乗ってれば、さすがに慣れる。
 気持ち悪さすらなくて、今ではこの揺れで爆睡も余裕だ。

「んー?」

 海ばっか見てるのも飽きた。
 だからなんとなく上を……空を見上げた。

「……ねぇ、帽子屋」
「どうかしましたか、チェシャ」
「あれ、何に見える」
「あれ?」

 ゆっくりと指差す。
 帽子屋だけじゃない、ネズミもその指の先を見る。

 見える? あれ、何だと思う?

「……人、ではないでしょうか?」
「だよねぇ」

 くるくると何もない空から落ちてくる黒い影。

 声も出さずに、何で空から落ちてるんだろ。
 いや、そんなことはどうでもいっか。

「で、どうすんの?」
「猫、目が輝いてますよ」
「まぁ、どうするも何も……」

 ゆっくりと、手を伸ばした。
 その影に向けて。

「人助けはするものでしょう?」

 そうこないとつまらない。
 さすが帽子屋、分かってる。

 これからしばらくは退屈しなさそうだ、なんて。

 飽きたら捨てればいいだけ、なんて。

 この時はそう思っていた。
 だからただ純粋に、帽子屋が放つ魔法で救い出されるそいつの存在を、楽しみにしていた。

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