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「BLUE_LIGHT」
Episode.0 不思議の国のアリス

09 女王の御心のままに

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「少しばかり、酷な判断だったのではないでしょうか?」
「女子どもだからと言って、甘く見るつもりはない」
「ですがクイーン」
「そもそもだ、何故あんなのを拾った?」

 言葉を途中で遮るようにして、クイーンが鋭く問い詰めるように口を挟んだ。
 その顔には明らかに不機嫌と書いてある。

「なんとなく、でしょうか?」
「お前がチェシャ猫のようなことを言い出すとはな」
「ふふっ、ですが気になったというのも本音です」

 くすりと、口元に手をあてて笑った帽子屋にクイーンは軽く眉をひそめた。

「ヤマネからの報告は聞いておりますでしょう?」
「あぁ。なんでも、気がつけば空から落ちてきたとのことだろう? 馬鹿馬鹿しい」
「ですが事実です。ヤマネだけでなく、チェシャ猫も、私もこの目でしかと見ましたから」

 無言でキセルに火を点したクイーンは、それを一瞥し、深く吸った煙を吐き出した。
 帽子屋が嫌そうに軽く手を振るう。バタンと、触れたわけでもないのに丸窓が開いた。

「転移魔法に失敗したとか、飛行機とやらから墜落した、そんなところだろう?」
「貴方もご存知の通り、この辺りで大きな魔法が動いた気配はありません。また、この海域は磁場の影響が大きいがために飛行機は飛ばないとのこと。ご存知でしたでしょう?」
「……何が言いたい」

 煙が二人の間に漂う。
 外から聞こえる波の音しか聞こえない。

 互いの碧い瞳がぶつかる。
 片や鋭く、片や冷たく。

「彼女は指輪をお持ちでした」
「指輪だと?」
「ただの指輪ではないようです。じっくりとは見れませんでしたが、時計を持ったウサギと髪の長い少女が彫られていました」

 クイーンの切れ長の目が、鋭く細められた。

「それだけか?」
「さぁ? 詳しくは分かりません。ここにくるまでも、大事に持っていましたから」
「……もしかしたら、と言う可能性がある、か」
「かもしれません」

 ふぅ、と煙を吐き出したクイーンは静かに瞳を伏せた。

 脳裏に思い浮かべるのは、先ほどの少女。
 始終意味がわからないことばかり言っていた、奇妙な娘。長い黒髪に、戸惑いの色ばかり浮かべていた黒い瞳。
 花の盛りであろう年頃の娘の格好にしては、少々変わった服を着ていたが、そんなことはどうでもいい。
 空から落ちていた、と言い、ここはどこ? と繰り返していた。

 可能性の一つとして、考えるくらいはいいかもしれない。

 すっと、クイーンは視線を上げた。

「マッド」
「なんなりと」
「娘をここへ」
「我らがクイーンの御心のままに」

 深く、美しく。
 優雅と言う言葉がふさわしい一礼をして、帽子屋は船室を後にした。

 クイーンの所要した娘を迎えに行くために。
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