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「BLUE_LIGHT」
Episode.0 不思議の国のアリス

24 ご機嫌斜めなアリス

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「ねぇせんせい。これっておいしいのかな?」

 金色のふわふわとした髪を風になびかせながら、クリスタルに入れられたお菓子をキラキラとした瞳で見つめていた。
 ごろんと甲板に寝そべっているため、水色のエプロンドレスから白いドワローズがあられもなくめくれ見えている。
 細い足をぶらぶらと揺らして、少々……いや、かなりはしたない姿である。

「せんせい、これたべちゃだめー?」
「止めといたほうがいいんじゃない? この前みたいにおなか壊すのがオチだと、俺は思うけどぉ?」
「えー、でもおいしそうだよ?」

 制止の声も聞かずに、思わず伸びてしまった手をぴしゃりと叩かれた。

「いたいっ!」
「それに触るなと、言ったはずですが? 私の言うことを聞いていなかったと?」
「ごめんなさいせんせい。でも」
「口答えを許した覚えはありませんが?」
「はぁい、ごめんなさいもうしません」
「よろしい」

 しぶしぶながらも頷いた様子に満足した“せんせい”と呼ばれたその男は、白い手袋をはめた手をさっと振った。

「あー!」
「これ以上ここにおいて置くと食べかねなさそうですからね」
「あは、それちょー正しい判断だと思うんだよねぇ」

 ケタケタと笑う間延びした声の男を静かに見る。

「その馬鹿げた笑い方、イライラするので今すぐに閉じないと縫いとめますよ?」
「……」

 その瞳は本気だった。
 冗談すら通じないような雰囲気に、ぴたりと口を閉ざすしかない。
 背中を嫌な汗が流れた。

「せんせい、わらうのはチェシャねこだよ。まちがえてる!」
「えぇ、ですから普通の猫じゃない猫は嫌いなんですよ」
「チェシャねこいがいのにゃんこは、ちっともわらわないんだって! ふしぎだねー」

 無邪気に笑うその様子に、せんせいと呼ばれた男との間に流れた不穏な空気が消え去ったように感じた。
 起爆剤にも緩衝材にもなる存在がここにいることに、知らず息をついた。

「さて、もうすぐ我が家に帰れそうです。お前はトランプとでも戯れていなさい」
「トランプあそびならボクもやりたい!」
「先生が言いたいのは、俺一人で、でしょぉ?」
「えー、だってボクもトランプあそびしたいよー!」
「あまり我儘は言うなといったはずですが?」
「今回だけは、我慢して欲しいって感じなんだけどぉ……ダメ?」

 少しむくれた様子でそっぽを向いた頭に手をのせて、優しく撫でてやる。

「ねぇ、アリス」

 彼らのアリスのご機嫌は、しばらく直りそうになかった。
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