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「Hazel amd Gray」
紫色の娘

12 別離

 ←11 声 →13 涙

 夢を見ているような気がした。
 だって、ここは真っ白で何もないところなんですもの。

「ラプンツェル」

 魔女のお母さまの声が聞こえた。
 ゆっくりと声の方を向くと、どこか泣きそうなお顔の魔女のお母さまが、少し遠くにいらっしゃった。

 手を伸ばしても届かない距離にいる魔女のお母さまは、どうしてそんなに悲しそうなお顔をなさっているの?

「ラプンツェル、あたしとの約束、破ったわね」

 その言葉に、はっとした。

 勝手に話してはいけない。言葉を口にしちゃいけない。
 声を出してはいけないと、魔女のお母さまとずっと約束していたのに。

 私はそれを、破ってしまった。

「あぁ、そんな顔すんじゃないわよ。別に責めてるわけじゃないんだから」

 でも、魔女のお母さまとの約束を破ってしまったから。
 だから魔女のお母さまはそんな悲しそうなお顔をなさっているのでしょう……?

 伺うように顔を上げると、魔女のお母さまはため息を一つ吐いた。

「あたしとの約束を忘れるくらい守りたかったんでしょ、あいつを。あんた、あいつのことが好きなんでしょ?」

 どこか穏やかな紫色の瞳でお尋ねになられて、私は頷いた。

 あの方が大切で、大好きなのは本当よ。魔女のお母さまと同じくらい、大好き。

「その好きがどんな好きかは分かってないみたいだけど。まぁいいわ、恋する奴に関わると面倒だもの」
「?」
「始めからこうしとけばよかったのよね……。踏切り付けるにはちょっと遅かったかしら?」

 まぁいいわ、と魔女のお母さまは指を鳴らされた。
 ぱちんと、心地よい音が響いたかと思えば、私の喉元から淡い緑色の光が生まれて、魔女のお母さまの元へと吸い込まれていった。

 一体、何をなさったのかしら?
 不思議そうに首を傾げていると、魔女のお母さまはどこか困ったように微笑まれた。

「あんたの声、取り上げるわ。どこへでも好きなとこに行きなさい」
「!?」
「あんたの部屋は、あんたが壊したんだからちょうど良かったんじゃない? せいぜいあいつと仲良くやってれば」

 どうしてそんなことを仰るの?
 魔女のお母さまは、私のことを嫌いになってしまわれたの?

 視界が涙で滲んで、魔女のお母さまの姿がぼやけてしまう。
 白かった辺りも徐々に光を失って、何も見えなくなってしまう。

「さよならよ、ラプンツェル」

 そんな、どうして、待って!

 消えていく魔女のお母さまの姿は、もう二度とお会いできなくなってしまいそうな気がして……。
 叫ぼうとしても声がでてこなくて、私はただ嫌々と首を横に振る他なかった。

 声にならない声で、届かないと分かっていても叫んだ。

 お母さま、と。

 魔女のお母さまは、ただ穏やかそうな笑みを浮かべて、消えてしまわれた。
 私の視界も、いつしか黒に染まって何も見えなくなってしまった。
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