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「Hazel amd Gray」
紫色の娘

13 涙

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 涙がつぅと頬を滑り落ちて、そっと目を開けた。
 どうして泣いているかなんて分からないけれど、それでも今見た夢がとても悲しくて。

 魔女のお母さまとお別れする夢は、夢であるのよね?

「……泣くな」

 ごしごしと、貴方が少し乱暴な手つきで私の頬をこすった。

 貴方のどこか疲れたような姿が映った。
 それから、私のお部屋じゃないどこか。お日様をさえぎるたくさんの緑や茶色く汚れてしまう床を、私は知らないわ。
 ここはどこ? まるで絵本の中の外の世界のような……。

 ぱちぱちと瞬きをするたびにこぼれ落ちる涙は、どうしてか止まらないの。胸だってじくじくと痛いわ。

「だから、泣くなって言っているだろうが」

 拭ってくださる貴方の手の温度に、涙は勝手に流れてしまう。

 私だって、泣きたいと思って泣いているわけじゃないの。それでも悲しくて、悲しくて。胸が痛んで、涙なんか止まってくれないの。

 ここに魔女のお母さまの姿がなくて、さよならと言われたのが本当のように思えてしまって……。

 新たな雫が溢れて、零れ落ちる。

「ったく……」

 面倒くさそうに大きくため息を吐いた貴方。
それから、ぎゅっと、私をその大きな胸の中に抱き締めてくれた。
 暖かな腕に抱かれて、涙で濡れた顔を肩に押しつけさせて。落ち着けると思えるほどに暖かな体温に、慣れてしまった貴方の胸の中。

 背中を、肩を、私を抱き締めてくれる貴方はどうしてこんなにも優しくしてくれるの?

「いい加減泣き止め。俺はお前の泣き顔拝みに来てたわけじゃないんだからな」

 そう言いながら、宥めるように私の頭を撫でてくれる。ドキドキするのも忘れて、私は貴方の胸にしがみついた。

 貴方が消えてしまわないように。この優しい腕が夢ではないように。

 もう何も失いたくなんてなかった。

「とっとと泣き止め。それで、俺のためだけに笑え」

 まばたきをした瞳から、また新たに涙が零れた。

 どこへでも好きなところへ行きなさいと、せいぜいあいつと仲良くやってればと、そう仰って魔女のお母さまは私の前から姿を消してしまった。
 私のお部屋だって見つからない。

 だから、私の世界には何もなくなって……、貴方だけが私の全てだった。

「なぁ、ラプンツェル」

 貴方が私の名前を呼んでくださるなら、私はいつまででも貴方の声に答えるから。声にならない声で答えるから。

 だから、どうか、貴方だけは私のことを嫌いにならないでくださいと、祈るような気持ちで私は何度も貴方が呼んでくださるたびに頷いた。


 これが、アウトキリア国の王妃になる前の、私の物語。


Fin.

*紫色の娘
 メインはラプンツェル(髪長姫)
 サブメインは人魚姫
 切な目を意識したほんのり恋愛風味
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