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「Hazel amd Gray」
淡褐色と灰色

01 手紙

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『親愛なる義母さんへ

 父さんがいなくなってから、義母さんにはとてもお世話になりました。
 私がこうして無事十六まで何事もなく生きれたのは、義母さんが扶養家族として迎え入れてくださったからだと、とても感謝しています。

 ですが、そうも長々と甘えてばかりはいられないので、私は家を出ていきます。
 義母さんにこれ以上迷惑は掛けられませんから。
 自分で立派に稼いで自立して生きていきますので、心配はしないで下さい。

 家族の幸せを願って。
 灰色の娘より。

 追伸、
 兄さんにも、一応よろしくお伝えください』


 既にもぬけの殻となった娘の部屋でこの手紙を見つけた彼女は、その文面に目を通して我が目を疑った。
 信じられなくてもう一度始めから読み直すが、書いてあることが変わることはない。

「なんてこと……」

 妙に冷静で歳のわりに大人びている娘ではあったが、まさかこうも無謀な家出を実行するとは。
 妙に聡い子で、何を考えているのか分からない灰色の瞳がどこか気味の悪いもののように思えていたが、こうも唐突に出て行ってしまうなんて……。
 どうしてこうなってしまったのだろうか。

「……まずは、落ち着くべきよね」

 大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせてから彼女は考えだした。
 いつ家を出て行ったのかは分からないが、暗くなってから出て行くような無用心で無鉄砲なことはしないような子だ。夜も更けたこの数時間ではないはず。
 そう考えると、今から追いかけるにしても見つけるのは難しそうだ。

 となると、娘がまず行くであろう思われる場所を突き止めるしかない。
 だが、年頃の娘の考えそうな場所に行くような子ではない。それならどこに行くというのだろうか?
 彼女には、全くもって予想できなかった。

「……ゼル、私のゼル!」

 息子ならば知っているかしらと、どこか他人任せで息子の名前を呼んだが、返事はない。
 妙に静まり返った部屋の中、待てどもいつまで経っても返事は愚か姿ですら見せに来ない。

 何故か嫌な予感がした彼女は、娘からの置き手紙を握りしめたまま、隣の息子の部屋に駆け込んだ。

「ゼル?」

 さっと室内を見渡す。
 何も変わったところはないが、窓から射し込む月明かりが照らしだすその部屋に、息子の姿はない。

「いない、の……?」

 人の気配がない、妙な静けさを保った部屋は綺麗に片付いている。
 あまり自室に入ることすらなかった子だから、違和感を覚えることなどないはず。
 だが、あまりにも綺麗に整えられたこの部屋は、何処か他人を拒んでいるような気がするのだ。

 ふと、机の上に置かれた白い紙が目に留まった。

 読まないほうがいいと、頭の中で警鐘が鳴っている。
 だが、その文面を目が追ってしまうほうが早くて……

「あぁっ……!!」

 文字の意味を頭が理解してしまうと同時に、思わず悲鳴にも似た声がこぼれてしまった。
 娘が何を考えていたとか、どうして違和感を覚えたとか、すべてが吹っ飛んだ。

「どうしてゼルまで……!!」

 息子が残した置き手紙には、


『愛すべき僕の妹が家から出ていくらしいので、年頃の娘一人じゃ心配だし、お兄ちゃんの僕もついていくことにしたからヨロシクね』


 と、妹のような礼儀正しさすらない軽い文面が並んでいるだけだった。

 驚愕の思いで瞳を見開いた彼女は、無意識のうちにぐしゃりと娘の置き手紙を握り潰していた。



灰色
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