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「Hazel amd Gray」
淡褐色と灰色

03 就職先

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 五番街の最も人通りが多い場所に、でんと構えてある大きな建物。
 それこそが二人が目指す職業斡旋所であった。

 短期の請負業から長期雇用のものまで、様々な仕事を紹介してくれる中心地と言ってもいいだろう。
 出入りや探索は自由だが、請け負うには職員の許可が必要と言うほぼ自由な形をとられているこの場所で、グレイは求人表を熱心に見ていた。

「商圏が中心の四五番街の方が制度があやふやね……。かと言って、鉱山や加工業系の六番街は避けたいのよね……」

 それに、家も近いし。
 と呟きながらも求人表をめくる手は止まる様子がない。

 エリアによって特質が異なっているこの国は、その場所事に制度も違う。信用や信頼、最低限の保険や給与制限に疑問が生じる場所は避けたい。
 そんな優遇対応の場所で、十六の特に秀でたところもない小娘を雇ってくれる場所はあるかないか。それすらも怪しいほど。

「これにはないわね……」

 一通り目を通した後、すぐに別の場所の求人表を手にじっくりと目を通す。それの繰り返しだった。
 少なくとも、グレイは。

「ねぇ、グレイ」
「煩いわね、今忙しいの後にして」
「でもさ、ちょっと話し聞いてくれるくらいは」
「あ・と」

 建物の中で勝手にブラブラ歩き回っていたゼルは、一心不乱に仕事を探すグレイの後ろで、ねぇねぇと何度も話を掛けていた。
 無視されようがあしらわれようが、しつこいほどに。

「グレイー、僕の可愛いグレイー?」
「……少しは黙ってられないの?」
「うんっ!」
「……はぁ」
「ねぇねぇグレイってば」
「分かったわよ。あぁもう、さっきからなんなのよ」

 いい加減煩わしさも限界に達したらしいグレイは、灰色の瞳を鋭くさせてゼルを睨み付けた。
 結局、いつも先に折れるのはグレイの方なのだ。

 ようやく振り返ったグレイに、ゼルは満面の笑みを浮かべながら一枚の紙を両手で突き出した。
 ここにある求人表の一つのようだが……。

「これが何?」
「請けちゃった」
「……は?」

 至極簡潔に言われた言葉に、グレイは思わず聞き返してしまった。

 いや、仕事を請け負ったと言うことは分かる。それは理解できる。
 だが、何故?
 どうしてこの兄バカが請け負ったのかが分からない。

「ちょっとドキドキしちゃうよね、お菓子の家にいる魔女って」
「……はぁあっ!?」

 そして、いかにも怪しい仕事を請け負ってるのにも関わらず、ニコニコと笑う神経を持ち合わす目の前の人物と、本当に血が繋がっていることも不思議でならない。
 グレイは慌ててゼルが持つ求人表を奪い、目を通した。

「さ、三番街の……魔女の下働き……?」
「そう! 住み込みだから衣食住は保障されるし、ちゃんと“まっとうな”仕事でしょ?」

 褒めてと言わんばかりに嬉しそうなゼルに、そう言う問題じゃないと返すことすら面倒になったらしい。
 グレイはただ深くため息を吐いた。

「一度受けた仕事は最後までやらなくちゃだし、頑張ろうねグレイ!」

 キラキラと、様々な色に見える淡褐色の瞳を輝かせて、ゼルはとびきりの笑顔を浮かべた。
 対称的に、グレイは不安が浮かぶ面持ちで頭を抱えていた。

 きっとゼルは分かっていない。
 三番街が貴族らの裕福層が住む場所であることを。

 魔女が、誇り高き孤高の存在だと言うことを。
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