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「Hazel amd Gray」
淡褐色と灰色

05 密約

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 階段降りた目の前にある部屋がキッチンだと教えると、グレイは分かったわとだけ言って、入ってきた時よりは軽い足取りで部屋を後にした。
 魔女とゼルだけが部屋に残されている。

「……あんたの、淡褐色(ヘイゼル)の瞳、でしょ」
「うん。そう、グレイは何も知らないし、関係ない」

 唐突に投げ掛けられた言葉に、何がとも何をとも聞かないで、ゼルは正確に答えた。

 グレイの灰色の瞳とは違う、淡褐色の瞳。
 光の加減で茶色にも緑にも黄色にも見える、不思議な色を輝かせているその瞳は、どこか魅入ってしまいそうな怪しげな色のように見える。

「あの人が魔女なのは知ってたよ。綺麗なものが好きだから僕を手元に置いていたらしいけど、そんなに綺麗だと思う?」
「綺麗なんじゃない? あいつの美意識は相当高いから」
「知り合いだった? ならゴメンね、さっきキミが言ってたこと、僕は本当に望んでたから」

 どこか諦めたような笑顔でそう言うゼルは、やはりどこか飄々としていてくえない男だ、と魔女に感じさせた。
 グレイには甘えているくせに、それでも関わらせようとしない。グレイとその他では扱いが全然違うようだ。

「繰り返すけど、今のあたしじゃあいつに太刀打ちできないわ。あんたたちから異常なくらいあいつの気配を感じるくらいが限界。情けない話だけど、これが現状よ」
「そんなの見れば分かるって! 僕はただ、グレイを守ってほしいだけだからさ」

 窓の外を覗くと、空は既に暗くなっていた。星屑をちりばめた夜空が広がっている。
 魔女がぱちんと指をならすと、ぼんやりと室内に明かりが灯った。

「あの子を守っても無意味よ。あいつの目的はあんただけだから」

 知ってる? と魔女はとある姫の話を始めた。

 雪のように白く輝く美貌の持ち主の姫は、あまりの美しさに魔女に狙われた。その美しさを永遠にしようと、命を狙われたのだ。
 森へ逃げ出したって執拗に追い掛けられ、守られていたとしてもついには毒林檎により命を終わらせ掛けた。

 もっとも、本当に死ぬ前にあたしがなんとかさせたけど。とは魔女が言うものの、なんとも物騒な話である。

「それくらい、バカみたいなほどあいつは“綺麗なもの”に執着してんのよ?」
「知ってるよ。だからこうして助けを求めたんじゃないか」

 ニコニコと笑みを絶やさないでゼルはそう言い切った。
 彼に対して重要なのは己の身の危険ではない。

「僕はもうすぐ不在がバレて喚び戻されそうだから……、だからグレイだけでも守ってよ」
「それはあんたのエゴでしょ。あの子はそんなこと望んでないわよ?」
「それでも、僕は大切な可愛い妹が心配だからね」

 なんと言っても、僕はそんな可愛い妹のお兄ちゃんですから。

 どこか誇らしそうに言ったゼルは、淡褐色の瞳を優しく細めて綺麗に笑った。
 先程のような淋しそうな色も、これから彼の身を襲うであろう恐怖も、そんな負の感情が見えないくらい綺麗な笑みだった。

「……紅茶が美味しかったら考えてあげるわ」
「それなら大丈夫! グレイのストレートティーは絶品だから!」

 どこが大丈夫かは分からないが、これは魔女が守ってやらねばならないような雰囲気だ。
 面倒くさそうに、魔女はため息を吐いた。

 そんなときだった。

「……あぁ、時間だ」
「っ!?」

 ゼルを中心に渦巻く魔力の気配。それが凝縮され、弾けた、と思ったときにはそこにゼルの姿はない。
 後には酸味の爽やかな林檎の香りが広がるだけだった。

 目の前で起こった魔法に、ただ見てることしかできなかった魔女は、歯痒さを舌打ちにすることしかできなかった。
 自分の領域で魔法を使われた屈辱からくる怒りにも、どうすることもできないのだ。

 この罪を背負った身体では。
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