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「Hazel amd Gray」
淡褐色と灰色

07 真実の鏡

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「っ!?」

 身体に残るは違和感。
 頭の先から引っ張られる感覚がしたかと思えば、それも一瞬で、奇妙な眩暈が残っているだけだ。

 グレイは眩暈に頭を押さえながらも、ゆっくり目を開けた。
 暗い場所。薄明かりに目を凝らせば、所々に積み重ねられた段ボールが動ける空間をさらに限定している。少し鼻に付く埃っぽさも加わって、先程までいた場所とは明らかに違うことを指し示していた。

 帰って、きた……。

 結局一日も経たずに帰ってきてしまった我が家に、グレイは小さく息を付いた。
 魔女に言われた真実の鏡は、薄明かりに照らされて、その存在感を奇妙なほど静かに示している。
 本当にこれは魔法の鏡なのだろうか? まだ義母が魔女だとはっきりと決まったわけではないのに?

 鏡には、グレイの疑り深い顔が映っている。

「……真実の鏡と言うなら、教えて。ゼルは無事?」

 半信半疑で鏡に向かって呟くと、ぐにゃりと、グレイの姿が歪んだ。
 渦を巻くように変化する鏡面に、グレイは思わずといったように後退ったが、この狭い室内ではそう距離はとれない。

 鏡が変化を止めた。
 そこに映し出されているのは……

「……ゼル!?」

 疲れたように床に座り込んでいる、グレイとよく似た面立ちの青年。
 紛れもなくグレイの兄、ゼルだ。

 だが、何故木の枝のようなもので手首を縛られているのだろうか?
 何故義母がそんなゼルの頬を持ち上げて、視近距離で恍惚とした表情で見入っているのだろうか?

「何、これ……」

 グレイは始め1人で家出を決行した。他でもない、家族のために。
 だから、ゼルが一緒に来たことはかなりの誤算だった。安全な場所で、父の代わりに義母を守るべき立場なのに、と。
 二人が幸せであればそれでよかった。

 だがこれはなんだ?
 この光景はなんなのだ?

 これでは誰も幸せなどになれるはずがない。幸せになど、なれるようなものではない!

 ゼルは何故義母に捕らえられている?
 何故義母はゼルの瞼に口付けている?
 これは一体どういうことなのだ?

「……かっ」

 あまりのことにうまく話せない。
 頭が混乱する。意味が分からない。
 それでもグレイは言わなくてはいけないのだ。

「義母さんの、魔力の源はっ、何処……?」

 鏡がそれに答えるように、グニャリと鏡面を歪ませた。
 頭で理解できない事象が消え去ってくれる。二人の姿は映ってはいない。
 そのことに酷く安心して……安心してはいけない。
 これが本当に真実の鏡だとすれば、先ほどの光景は実際の出来事と言うことになる。

 冗談じゃないわ……!!

 グレイはきつく拳を握り締めた。
 自分の目で見たものは基本的に信じる主義だ。否定し切れるほどおめでたい頭は持ってない。
 ならば目の前でおこっているのは現実だ。

 真実の鏡は義母の魔力の源と言われるものを映し出している。
 それを強く見据えて、グレイは強い口調で鏡に向かって……先ほど見えた義母に向かって言った。

「ゼルは、返してもらうわ……!!」

 グレイはそれがどこにあるか理解するや否や、言葉や感情とは裏腹に、静かにその場を後にした。

 真実の鏡に映るは、義母の魔力の源である、鉢植えにある小さな林檎の木。

 それを壊してしまおう。
 ゼルを取り戻すために。
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