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「零れ話」
幸運少女

そのいち。

 ←三男、カーディン様 →そのに。
 思えば、ボクは家族に憧れていたのだと思う。
 無条件で受け入れてくれる存在。伸ばしたら掴みとってくれる手。甘えても、寄りかかっても、仕方ないなぁって、許してくれる人。
 多くの人にソレはあって、ボクにはない。
 それが酷く虚しくて、どこか常に空っぽで、どうしても欲しくて。
 それを手にすることが出来るかもしれない力を持っていたのは、果たして幸か不幸か。
 ゆっくりと、紡ぐ。

「ここに、来て」

 ふわりと、魔素が浮かび上がる。頼りない薄羽が魔素の流れにハタハタと揺れた。
 床には綿密に書き込んだ魔方陣。八角には純度の高い魔鉱石。
 己の魔力を練り込めれば、じんわりと青く発光する鉱石から魔方陣へと魔力が浸透してゆく。
 これだけじゃ足りない。まだまだ、足りない。

『二ココ レタキ ノモムゾノ
 ノモルメウ ヲマキス ノロココ
 クリョマ ノリノイ ハグササ ニイカセ』

 祈りの言葉を織り込みながら紡ぐ魔力は、魔方陣にゆっくりと浸透してゆき、その色を濃く、強く発光させている。うねる魔素の波が風を巻き起こし、簡易固定しているだけの魔鉱石をカタカタと浮かせようとしていた。
 書き損じた紙が舞う。部屋の隅に寄せておいた薬瓶が、本が、小物が、ガタガタと動き回る。
 細くて小さな羽が、大きくしなりながら毛を逆立てる。玉のような汗が流れ出てはしたたり落ちるのを気にも留めず、細い足で踏ん張りつつも魔力を注ぎ込む。
 手が震える。唇が乾く。
 これまで使用してきたどの魔方陣よりも強力なそれは、どこまでも貪欲に魔力を求め、ずるりずるりと身体より大量に引き出される。身体中の魔力を引き出されて、魔方陣に飲まれそうな錯覚ですら抱く。

『二ココ レタキ テエコ ヲマザハ
 ムゾノチマ ヲレズトオ ノタナア』

 必要ならば持っていけば良い。この身にある魔力など根こそぎなくなってもいい。
 だから、どうか。
 どうか、その暖かなぬくもりをボクに下さい。
 広げた腕に飛び込む権利を、ボクに下さい。
 友達でも恋人でもない、家族を、ボクに下さい。

「おいっ! ラックお前何してやがる!」

 いけない。彼が来てしまった。
 強く部屋の戸を叩かれる。直ぐにガツンと何かをぶつける音が聞こえたので、突破されるのは時間の問題だろう。
 これは、きっと最初で最後のチャンス。
 堪えきれずに床に座り込み、魔方陣に向かってありったけの魔力を放出した。

『ケドト ヨリノイ
 レタキ 二ココ !』

 カラカラになった声で叫ぶ。
 その瞬間。
 どう、と魔方陣から強い衝撃が放たれたと同時に、光の柱が立ち上る。反射的に顔を逸らして閃光の直射を避けた。魔素が衝撃波に乗って荒れ狂うのを、大きくしなる羽で直に感じ取っていた。
 身体はもう限界だ。魔力欠乏症に陥る一歩手前で気持ちが悪い。ぐるぐると回る視界に、渇いた喉を荒い息が何度も通り過ぎる。

「ラック!」

 ばたん、と扉を壊されて彼が突入してきたのが分かる。でも、そちらを見る余裕はない。

 回る視界の中、彼女を見つけたから。

 彼女が、来て、くれたから。
 それが分かっただけで十分だ。彼女が居てくれるだけで十分だ。
 へにゃりと笑って、同じように座り込み彼女へ手を伸ばした。震える手。
 受け取って貰えるはずの、手。

 ただ、魔力を殆ど失った今の状態ではそれ以上意識を繋ぐのは難しかったようで、手を取られたかどうかも分からぬまま、ぱたりと、床へ倒れ伏せた。

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