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「Hazel amd Gray」
橙色の灯火を

08 少女

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「はっ……くしょんっ!!」
「ほら、だからそんな薄いコートなんか着てくと寒いって言ったでしょ」
「だってまさか雪が積もるなんて思わなかったんだから……っ! あぁ、グレイ離れないでー」
「くっつかれると歩きにくいんだけど」
「つれないこと言うなよー、お兄ちゃん寒いんだぞ」
「そんなの自業自得よ」

 夜から雪が降り続いていたために五番街は、白い雪に被われていた。
 店の前を雪かきしている者、寒さに携帯温熱機を買い求める者、積もった雪にはしゃぐ者と様々な反応を見せる人々が行き交う通りは、今日も活気づいている。

 水彩画で描いたような薄い水色の空が広がっている。
 キンキンに冷えた空気に太陽の日が射しているため、何故だかキリリと背筋が伸びた。

「あれ? 何か人がいっぱいいるよ」
「だから何?」
「気になるじゃんか、ねぇグレイ、見に行こう?」
「私野次馬嫌いなんだけど」
「いいからいいから」

 五番街の通りから脇道にそれる小道に人だかりができている。
 人混みをかきわけて中心部へと出ると、何を見て人々が戸惑い、泣きそうな顔をしているかを理解した。

 そこには、雪に被われた一人の少女が座り込んでいた。

「……」

 こんなところで寝ているのかとでも思ってしまいそうな少女の手足は、尋常ではない色をしている。
 白を通り越した青色。

 閉じられた目元には涙の跡が残っており、誰もが白い息を吐き出しているというのに、彼女からそれはない。
 呼吸の証である肩も胸も動く気配はないようだ。

 生きている人間ではなかった。

「どうしてこんなところに……」
「私たちの希望は、本当に消えてしまったのね……」

 騒めく声には、悲しみの色しかない。

 夢を売る少女はもういない。
 もう少女から夢を買えないことを悲しんでいるのか、同じ痛みを分かち合った彼女が死の道を選んだことを悲しんでいるのか。
 それは誰にも判断はできないが、誰もが少女の死を悲しんでいるのは確かだった。

「……あの子、昨日ゼルとぶつかった子よね」
「うん。マッチ売りのミアちゃんって言うんだって」
「マッチ売り……?」

 雪が降り積もった地面には、空っぽになった籠だけしか見当たらなかった。
 マッチなど何処にも見当たらない。

「あれ? 昨日の夜はちゃんとマッチあったんだけどな」
「ぶつかっただけじゃなかったの?」
「夜に呼び止められて……、なんか知り合いにスッゴく似てるんだって」
「ふーん」
「そんな目で見ないでよぉっ!? グレイ、お兄ちゃんは何もしてないからね!? 早く帰った方がいいって言っただけで……本当だってばグレイぃっ!!」
「煩いわね、分かってるわよ」

 騒がしい男を引きつれて、その場を後にした二人を止めるものなどいない。

 誰もが少女の死を悲しんでいた。
 少女のために涙を流していた。
 悲しみに包まれたその場所に、一人、また一人と少女から夢を買った者たちが加わる。

 悲しみに彩られた中、一つの違和感が浮き出ているのに、気付いた者はいたのだろうか?
 悲しむばかりで、誰一人気付けなかったのかもしれない。

 疲れたように寄り掛かっている少女の口元には、


 ほんのりと笑みが浮かんでいた。


Fin.


*橙色の灯火を
メインはマッチ売りの少女
サブメインは指きり(童謡)
“約束”を核にした狂シリアス風味
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