FC2ブログ

「Hazel amd Gray」
猫の瞳は琥珀色

01 号外

 ←08 少女 →02 迷猫

「号外、ごうがーい!!」

 新聞売りの少年が、声変わり前のボーイソプラノを響かせて、号外の記事を散らし回った。
 誰かの手に渡るだろうと、多くの人に見てもらえるだろうとしてだろうか。
 ひらひらと、少年の通った後に粗悪な紙が舞い落ちる。

 商用地区の五番街に号外など珍しい。
 大通りを行き交う人々は、足早に進めていた足を止め、号外の記事を手にして目を通す。

「王太子殿下の婚儀が執り行われる、か」
「あぁ、暗い世の中を吹き飛ばすいい号外だ」
「そうよね。この前の号外は、終戦についてだったもの」

 ピクピクと、路地裏に潜んでいた彼の耳が動いた。

 はて、今聞き捨てならないような言葉が聞こえたような気がしたのだが……。
 気のせいであったのだろうか?

 彼はそっと、緩やかに時を刻み始めた大通りの様子を覗き見た。

「しかし、王太子殿下が婚儀だなんていささか急じゃないか?」
「ご婚約の朗報なしに、いきなり婚儀だものねぇ」
「相手がこんなべっぴんさんなら、焦りたくもなるだろうよ」

 “婚儀”と言う聞き慣れない言葉に、それは一体なんであっただろうか、と彼は軽く首を傾げた。
 だがその後続く“婚約”と言う言葉に、まさかと瞳を大きく見開いて思わず大通りに飛び出した。

 歩きだした人間にぶつかりかけたが、そんなことを気にしている場合ではない。
 少年が撒き散らした号外の記事を引き寄せ、己の目で文字を辿る。

 そこには確かに、王太子殿下の婚儀を近日執り行うと明記されていた。

「めでたいことなら、うちでもあやかって何かするかね」
「あんたんとこだけじゃない、五番街をあげて……いや、アウトキリアの国全部で祝わないとだよ」
「やれやれ、それにしても早急なこった」

 そんな市民の声が聞こえた気がするが……、いや、そんなことはどうだっていい。
 重要なのは“王太子”が婚儀をあげると言うことであって、それが国賓を招くような行事であることなのだから。

「これはいかん……!」

 彼は人前であることも忘れて、思わず呟いてしまった。
 眺めていた号外を手に二本足で駆け出そうとして、それができないことに気付く。紙をうまく掴むことができないのだ。

「あぁ、くそっ。面倒だ……!!」

 忌々しそうに吐き捨てて、彼はザラザラとした粗悪な紙をくわえて、四本足・・・で駆け出した。
 そんな奇怪な行動をする彼を気に留めるものはいない。
 彼はそうすることが正しいのであって、それが当然だからだ。

 なぜなら、


 彼は“猫”なのだから―…。



猫の瞳は琥珀色
関連記事
スポンサーサイト





総もくじ 3kaku_s_L.png BLUE_LIGHT
総もくじ 3kaku_s_L.png ARUTOYU_MA
総もくじ 3kaku_s_L.png Hazel amd Gray
総もくじ 3kaku_s_L.png 零れ話
総もくじ  3kaku_s_L.png BLUE_LIGHT
総もくじ  3kaku_s_L.png ARUTOYU_MA
総もくじ  3kaku_s_L.png Hazel amd Gray
総もくじ  3kaku_s_L.png 零れ話
もくじ  3kaku_s_L.png 独り言
  • 【08 少女】へ
  • 【02 迷猫】へ
  • Tag List 
  •  * |
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【08 少女】へ
  • 【02 迷猫】へ