FC2ブログ

「Hazel amd Gray」
猫の瞳は琥珀色

02 迷猫

 ←01 号外 →ARUTOYU_MAについて

 グレイたち兄妹が住み込みで働きだしてから一ヵ月が経った。
 動けない雇い主の代わりに、家の維持管理をしておつかいに走り回る。そんな毎日にも慣れ、グレイは暇を作りだして五番街へ買い物へ行った。ウィンドウショッピングではない。今後の食料の調達である。

「……こんなとき、魔法が使えればって思うけど」

 控えめにしたつもりでも、三人分の量は多く、ずっしりと重い。
 商業区域の五番街から三番街までは乗合馬車を利用したが、そこからは歩きである。グレイは紙袋が破けないように両手で抱えて、黙々と歩きだした。

 歩いてしばらく時間も経った頃であろうか、グレイは奇妙な光景に出くわした。

「……この家、先ほども見た……か?」

 おそらくは迷子にでもなったのだろう。しきりに首を捻っている。
 それだけならば、どこもおかしなことはない。

 だが、この場にはグレイと彼以外一人として人はいないのである。
 グレイは口を開いてはいないのだから、間違いなく彼が話したのであろう。

「……」

 グレイはその場に立ち尽くして、まじまじと彼の姿を凝視した。

 猫って、話せたかしら……?

 らしくもないことを考えてしまうほどには混乱しているらしい。
 赤銅色の毛並みにしなやかな肢体の彼は、どこからどう見ても猫だ。
 ぴんと三角に尖った耳や、地面にゆらゆらと擦り付けられている長い尻尾がある彼は間違いなく猫なのだが……。

「!」

 くるりと引き返してきた彼と目が合ってしまった。
 額に斜めにつけられた傷痕と、琥珀色の猫目がやけに印象に残る。

 互いの間に気まずい雰囲気が落ちて、動けなかった。
 猫に気まずさを感じるのも間違っていると思ったが、あり得ない状況にグレイが動けるはずないのだ。

「……に、にゃあ」
「わざとらしいわよ」

 深く息をついて、グレイは固まりながらも鳴き声をあげた猫にそう切り捨てた。

 魔女がいて魔法が存在するのが当たり前ならば、猫が話したからなんだというのだ。これも現実ならば、受け入れる他ないではないか。

 現実主義を謳うグレイの切り替えは早かった。
 小さく肩をすくめて何事もなかったかのように歩きだしたのだ。
 紛れ込んだ人だろうが話す猫だろうが、関わらないに越したことはない。

「ま、待ってくれ……!」
「……何?」

 慌てたように駆け寄ってくる奇妙な猫を、グレイは冷たく見下ろした。

 ……やっかいごとは勘弁してほしいんだけど。
 そうは願えど、うまくいくはずがないのが現実なのである。

「あぁ、そんなに驚いてくれるな。これには深い事情があってだな」
「前置きはいいわ、用件だけ言って。夕飯の支度に間に合わなくなるから」
「む、すまない」

 しゅんと耳を垂らした彼は、小さく頭を振って気を取り直したように告げた。

「三番街に住むと言う、紫色の魔女の居場所を知らないか……?」
「……え」

 奇妙な猫の言葉に、グレイはピタリと動きを止めた。

 知らないはずがない。
 なぜなら、グレイの雇い主こそが“紫色の魔女”と呼ばれる存在なのだから。
関連記事
スポンサーサイト





総もくじ 3kaku_s_L.png BLUE_LIGHT
総もくじ 3kaku_s_L.png ARUTOYU_MA
総もくじ 3kaku_s_L.png Hazel amd Gray
総もくじ 3kaku_s_L.png 零れ話
総もくじ  3kaku_s_L.png BLUE_LIGHT
総もくじ  3kaku_s_L.png ARUTOYU_MA
総もくじ  3kaku_s_L.png Hazel amd Gray
総もくじ  3kaku_s_L.png 零れ話
もくじ  3kaku_s_L.png 独り言
  • 【01 号外】へ
  • 【ARUTOYU_MAについて】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【01 号外】へ
  • 【ARUTOYU_MAについて】へ