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「Hazel amd Gray」
緑色に口付けを

01 カエル

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 ふわふわと揺れる長い髪。
 毛先に移るにつれて赤からピンクに変わるグラデーションはお気に入り。
 緩いウェーブをかけて、リボンで二つに結ぶと歩くたびに人目を引くこと間違いなし。

 とびきり素敵な華奢な靴を履いて、レースとフリルがふんだんにあしらわれた短めのドレスを細身の身体で着こなして、透かしの入った日傘をさすの。
 お気に入りの色のグロスを小さな唇にのせて、パッチリと大きく見えるように目元には気合いを入れて化粧をしなくちゃね。

 最後に鏡の前でとっておきの笑顔を浮かべて完成。

「完璧……! やっぱりアタシは最高に可愛いわ!」

 ポーズなんかとったりしたら、愚かな人間の雄共なんかメロメロね!
 可愛いことが罪だとしても、女の子は可愛くなることが仕事だもの。仕方ないでしょ?
 砂糖菓子のように甘い声で、クスクスと堪えられなかった笑いをこぼした。
 これから見れる醜い雌の顔を思い浮かべると、笑いが止まらないわ。

「ふふっ、本当に愚かなお馬鹿さんよね」

 永遠の愛を信じたりして。
 一時だけの言葉に酔ったりして。

 そんなの嘘でしかないのに。
 真実の愛なんかどこにもないのよ。
 本気になったりして馬鹿じゃないの?

「所詮、この世は見掛けが全てなのよ」

 アタシの魅力にあてられて、アタシに追従するアンタたちの“永遠ノ愛”なんてものを誓った雄をみなさいよ。
 そんなの、紙切れみたいにペラペラよ?
 “永遠ノ愛”なんか所詮そんなものなんだから。

 アタシを恨むなんかお門違い。
 恨むなら自分の醜い顔を恨みなさいよ?
 そんな顔で雄を手に入れられるとでも思ってるのなら、自分の元に縛り付けておけると思うなら、自分の顔を鏡に写して出直してきなさい?

「さぁ、今日も罪を作りに行くわよ」

 にっと口元に笑みを浮かべて、チャーミングな笑顔を振りまく準備。
 アタシの魅力に腰砕けになる雄と、絶望で表情がごっそりと抜け落ちる雌を観に行くのよ。
 あぁ、アタシってばなんて罪作りな女!

「悪魔の娘、オディールちゃんのおでましよ」

 ウフフ、と魅惑的な笑顔を浮かべて、日傘をさした。
 くるくると回しながら華奢な靴で歩きだすと、ほら、そこはもう町外れ。

 不思議に包まれた女の子は、どこから来たなんて秘密よ?
 もちろん、どこに現れるかなんて気分のまま。
 あなたに会いにきたの、なんてね。そんな嘘にもコロッとしちゃうんでしょ?

 爪先で軽やかに歩いて、ふわふわの髪をなびかせるとアタシが使ってる甘いポプリの匂いがするはず。

 ほらほら、早く気付きなさい?
 振り向くだけじゃ目にもかけてあげないわよ?
 愚かなアタシの奴隷の、人間の雄共。

 アタシが魅惑的な笑顔を浮かべていると、声が掛けられた。

「おい! そこの、奇妙な色の頭をした女!」

 ピタリと、止まった。

「お前だお前!! とっとと振り向け振り返れ!」

 ……お前、ですって?
 このアタシを? お前呼ばわりするの?

 悪魔ロッドバルドの娘であるアタシに、命令するの……!?
 たかだか、人間の、雄のくせに!?

「ちょっと、アタシに命令しない……でぇっ!?」

 スカートの裾とツインテールをふわりと浮かばせて振り返っ……、振り返って……。
 その失礼な雄を見た瞬間、アタシはピシリと固まった。
 それから少しでも大きくパッチリと見えるように丹念に仕上げた目を、もっともっと大きく見開いて、絶叫した。

「いやあぁああぁっ!! カエルぅううっ!!??」

 そこにいたのは、

 可愛さの欠片も見当たらない、

 ヌメヌメとした表面の、

 緑色した、


 カエルだった―…!!



緑色に口付けを



「いやぁあっ!! きゃぁあっ!!」
「おい! 五月蝿い馬鹿女!」
「来ないでぇ! やだ気持ち悪いっ!!」
「なっ!? 気持ち悪いとか言うな! 好きでこんな姿になったんじゃない!!」

 ピョコピョコ跳ねながら追い掛けてくるカエル。
 華奢な靴で必死に逃げるアタシ。

 可憐に、なんか鼻で笑えちゃうほど似合わない走り方をするくらい全力。
 ペタペタと頬に髪があたる。スカートだって翻ってるし、キュートな笑顔を浮かべるのもできないじゃない!

「なんで追い掛けてくるのよぉっ!?」
「お前に用があるからに決まってるだろう!!」
「なんでカエルが人語を話してるのよぉおっ!!??」
「話せるからだ!」

 意味分かんない意味分かんない意味分かんない!!
 なんでアタシがカエルなんかに追い掛けられなくちゃならないの!?
 あんなに気持ち悪いものに!

 ちょっとちょっと! 誰か助けなさいよね!
 こんな可愛い女の子が、あんな気持ち悪いカエルに追い掛けられてるんだから!

「誰かっ! 誰か助けてっ!!」
「何を言っている! お前がさっさと止まればこんな疲れることしなくて済んだんだ!」
「いやよ来ないで気持ち悪い!!」
「だから、気持ち悪いとか言うな!」

 気持ち悪い以外に適当な言葉なんか見つからないわ!
 カエルってだけでも十分嫌なのに、話すとかなんなの!?
 この場所の雄共もこんな気味悪いカエルに動けないでいるとか、なんて情けないのかしら!?

 え? 悪魔の娘ならそれくらい平気じゃないかって?
 馬鹿なこと言わないで! 悪魔の娘でも苦手なものは苦手なのよっ!

「あぁもぅっ!!」

 華奢な靴で走ると足が痛くて仕方がないわ。ヒールだって高いし、爪先しか地面に触れてないんだから。
 面倒くさくなったアタシは、振り返りながら日傘をぶんと振るった。
 生み出された風の塊がカエルに直撃!
 やった、いい気味!

「ぐえっ!?」

 びたんと壁に叩きつけられたカエルは、鳴き声かなにかを叫んでそのまま地面にひっくり返った。
 これで問題ないわよね。
 あんな気持ち悪いカエルに追い掛けられるなんて二度とゴメンだわ!
 アタシがくるりと踵を返して、くるくると日傘を回しながらその場を後にしようとした、そんな時……。

「おっ、おいっ!!」
「カエルが……っ!」

 カエルが何?
 妙に爽やかな林檎の香りがした気がするけど、そんなことどうだっていいわ。
 騒めいて人だかりができ始めた方を、小さく振り返る。

「えっ……?」

 ぱちりと、瞬きを繰り返した。
 思わず身体ごと振り返って確認しても、何回見たってその姿が変わらない。

「ジークフリート、さま?」

 そこにいたのは、緑色のカエルなんかじゃない。
 淡い金髪の、まだ年若い青年。
 何度見たって、記憶の中で生き続けているアタシの……、

 ……アタシを裏切った愛しい王子さま。
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