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「Hazel amd Gray」
緑色に口付けを

04 白鳥の娘

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 奇妙なカエルを引き取って一週間が経った。
 何て言うか……、調子狂う。

「おい、派手女」
「派手とはなによ失礼しちゃうわね!」
「本当のことだろう? それより皮膚が乾く、霧吹きしろ霧吹き!」
「アタシに命令しないで! アンタなんかさっさと干からびていればいいのよ! 大人しく媚薬の材料にでもなってれば!?」
「何だと、お前は薄情者かっ! カエルはデリケートなんだからな意外にも!」
「うるさいわね! そんな事実知りたくないわよ! ……でも、ま、どうしてもって言うなら、してあげてもいいわよ?」
「どうしてもだ!」

 どうしてそう偉そうに言うのよ。
 そこはこう、悔しそうに言うか、屈辱的過ぎて言うの我慢するところでしょ?

 言ったんだから早くやれ! と言うカエルに、仕方なく霧吹きで霧を吹き掛けてやった。
 意味分かんないこのカエル。
 しかも、こんなカエルを1週間も手元に置いているアタシもワケ分かんない。
 こいつが何するか分からないから、街に遊びに行くことだってできないのに、なんでさっさと手放さないのかしら?

「……はぁ」
「ため息つくと幸せ逃げるぞ」
「うるさいわね、誰のせいだと思ってんのよ」
「俺のせいじゃないな、間違いなく」
「アンタ以外の誰でもないんだけど! なんで断言してんのよ!」
「そうなのか?」

 だから、なんでそう悪気なさそうな顔で見上げてくるのよ……!
 アンタのせいに決まってんでしょ、どうしてこう無自覚なわけ?
 なんでアタシがアンタなんかに振り回されてるわけ?

 こんな声を荒げたり、全然余裕なんかないアタシ可愛さの欠片も見つからないじゃない。
 可愛く着飾っても、見られてんのがアンタだけって思うと猫被る気も起きないし。
 せっかくキューティクルに変身したんだから、とは思うけど無理ね。またお洋服ダメにされたくないもの。

「なぁ、お前魔法が使えるんだろ? 俺の呪いを解けないか?」
「……面倒くさい」
「面倒くさいとはなんだ面倒くさいとは! ……さては、解ける自信がないんだな?」
「馬鹿言わないでちょうだい! アタシを誰だと思ってんの!? 悪魔の娘オディールよ!?」
「なら、面倒くさがらないで解け!」
「い・や!!」

 絶対嫌。超嫌、マヂで嫌。
 アンタに呪いを掛けた張本人が、呪いを解くにはキスすればいいだなんて言ってたのよ。
 そんなことアンタに言ったらどうなるかなんて、一週間も一緒にいたら嫌でも分かるわ。
 解け解けと叫ぶカエルを、全く触らないで振り払ってやる。

「ふぎゃっ!?」
「いっ、いやぁあああっ!!?」

 なんだか変な声が聞こえなくもなかったけど、気にしてらんない。
 あぁ、なんか憂鬱だわ……。
 こんなときこそ人間の雄を翻弄して、あの痛快な表情をする雌を見て気分を晴らすのが一番いいんだろうけど。
 あのカエルがいる限りそれも無理なのよね。あぁ、魔界通販でも見て衝動買いでもしてやろうかしら?

「きゃぁーっ! いやぁー、カエルー!」
「な、ななな、なんだっ!? なんなんだっ!?」
「誰かとってとってとってぇっ!!」

 …………。

「うるっさいわねっ!! 他人ん家では大人しく黙ってなさいよ!!」

 うるさくてイライラしたから思わず叫んで、初めて気付いた。
 とってとってぇっ! とカエルを頭に乗せてやかましい人間の雌。
 いつの間にここにいたわけ?
 普通人間は悪魔の娘の家になんか来ないわよ?

「いやぁあああっ! カエルぅうっ!!」
「あぁ、もう、うるさいわねっ!」

 腕を一振りして、カエルを剥がしてやる。
 アイツは宙でじたばたしてたけど、そんなことどうだっていいわ。

 だって、その人間の雌。


 オデットとか言った、白鳥の女にそっくりだったんですもの……!!


 あぁ、もう。
 何動揺しちゃってんのよ馬鹿!
 ジークフリートさまに似ていた姿のカエルの次は、白鳥女に似た人間の雌。
 五百年前と同じ姿だからって、五百年前と同じにはならないのに。
 ううん、少なくともここに恋情なんかないんだから、同じになんかなるはずないのよ。

「よくもやってくれたわね! 来て早々カエルをぶつけられるなんて……!!」
「アンタが勝手に頭に乗せてたんじゃない。なーんでアタシのせいにされなくちゃならないのよっ?」
「悪魔の娘だからよ!」

 理由になってないし。
 て言うか、人間っていっつもそれよね。都合の悪いことって全部誰かのせいにするの。
 悪魔の娘だからって、全部アタシのせいにされるのってイラッとするわ。
 長年生きているから、何万回目かなんか知らないけど!

「で、悪魔の娘に何の用? アタシこれでも忙しいのよね」
「わたしのアレンを返して!」
「は? アレンぅ?」

 アレンって何?
 必死の険相でそう叫ぶその雌に、アタシは首をかしげた。
 全然思い当たらないんだけど。

「わたしの彼よ! イーストヴェリアの街で、あなたがわたしの元から奪った……!!」
「奪っただと!? お前何してるんだ!?」
「カエルは黙ってなさいよ」

 軽くクルクルと指を回して目を回させてやると、目論み通り静かになる。
 よくあることだから、ややこしくされるとつまんないのよね。
 醜く歪むその顔見るのって、憂さ晴らしには持って来いだし?

「奪ったなんて人聞きが悪いわね。アンタの元に惹きつけとくことができなかっただけでしょ?」
「彼はわたしと婚約してたの! あなたが妙な魔法使ったからでしょっ!?」
「魔法なんか使う必要あった奴だったっけ? どんなのだったか記憶に残ってないのよね」
「そんな……っ!!」

 そんなって言われたって、事実だもの。
 街に出かけるたびにアタシの魅力に惹かれたお馬鹿さんが、フラフラと寄ってくるんだし?
 それで捨てられたなら、御愁傷様としか言えないわ。
 だって、アタシはただ歩いてただけだし。悪魔の娘が街を歩くことだけでも、アンタは罪だと言うわけ?

「もしかしたら、まだイーストヴェリアのどこかにいるんじゃない? 連れて帰る趣味なんかないから」
「な……によ、それ……」
「あぁ、もしかしたら本当に奪われてたりして。早く捜し出してあげた方がいいんじゃない? えぇと、ジョンだったかしら?」
「アレンよっ! 酷いわ、酷い! わたしからアレンを奪っておいて何を言うの!? そんなのってないわ……!」
「あら、何言ってるの?」

 取り乱すその女に、アタシはとびっきり可愛い笑顔を浮かべてみせた。
 今日のグロスはラメ入りで、少し艶があるように見えるチェリーピンク。
 魔性の女に見えるようには絶対思えない可愛い笑顔で、言ってあげるの。

「アンタだって知ってるじゃない。アタシは悪魔の娘オディールよ? そんなの誉め言葉だわ」

 涙を浮かべて唇を噛み締めるその女に、アタシはオマケにと鈴の鳴るような声で笑ってみせた。

 顔が、醜く歪む。
 それよそれ。その絶望に染まる壊れそうな表情!
 思わず壊してやりたくなるようなそれを生み出したのがアタシだなんて、そう考えるだけでゾクソクするわ!
 カエルに頭抱えてたのなんかどうでもよくなるわね。だからやめられないのよ。

「うふふ。せいぜい、頑張りなさい?」

 腕を振ってイーストヴェリアへ飛ばしてやる。
 バイバイ、白鳥女と同じ顔したアンタのその表情見れただけで十分だわ。
 後のことなんて、アタシの知ったこっちゃないわよ。

「……お前、いつか刺されるんじゃないのか?」
「あら、そう簡単に刺されてなんかやらないわよ」

 人間の雌なんかに、刺されたって何ともないわ。
 そもそも、アタシが人間の雌に刺されるはずないし。

 ……アタシが刺されたのはあの時だけよ。
 その時以外で刺されるはずが、射抜かれるはずないんだから。

 あの、ジークフリートさまの視線以外。

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